スポンサーリンク

チョウセンアサガオの咲く夏 | 柚月 裕子


米崎地検の検事・佐方貞人の事務官を務める増田陽二。高校時代の柔道部の恩師の告別式で、旧友の伊達と再会した増田は、マネージャーだった木戸と3人でその夜旧交を温める。増田にとって、伊達は柔道をやめずに済んだ恩人であり、ヒーローだった。だが、大阪で警察官になったという伊達には、ある秘密があった…(「ヒーロー」)。「佐方貞人」シリーズスピンオフ作品をはじめ多ジャンル作を集めた、著者初のオムニバス短編集。(「BOOK」データベースより)


本書『チョウセンアサガオの咲く夏』は、ショートショートを中心にしたオムニバス短編小説集です。

目次  チョウセンアサガオの咲く夏/泣き虫の鈴/サクラ・サクラ/お薬増やしておきますね/初孫/原稿取り/愛しのルナ/泣く猫/影にそう/黙れおそ松/ヒーロー

柚月裕子のいつものエンターテイメント性の高い娯楽小説とは異なり、ホラーであったり、少年の成長の物語であったりと、ちょっとニュアンスの異なるショートショートや短編が収められた小説集です。

宝島社文庫から出されている「5分で読める」というアンソロジー・シリーズの、「怖いはなし」や「駅」、「旅」といったテーマにそって書かれているショートショートが三篇。

「チョウセンアサガオの咲く夏」「愛しのルナ」「影にそう」がその三篇だそうです。

他に、猫に関連した話とちょっとひねりを利かせた短編がそれぞれに三篇あります。

猫関連の話が「5分で読める」シリーズにも出てきた「愛しのルナ」であり、ほかに「泣く猫」と「黙れおそ松」という作品で、「お薬増やしておきますね」「初孫」「原稿取り」がひねりの効いた話です。

「愛しのルナ」はホラーであり不気味という他ない話であって、「泣く猫」は亡くなった母の位牌の前で訪ねてきた女性の話を聞く女の話で、こちらは落ち着いた哀しみに満ちた話でした。

また、「泣き虫の鈴」と「影にそう」という瞽女に関連した二作品があり、他に南の島国パラオのかつての日本軍の話の「サクラ・サクラ」、「佐方貞人シリーズ」の登場人物の一人である検察事務官の増田を主人公とする「ヒーロー」があります。

最後の「ヒーロー」を除けば、どの作品もこれまでの柚月裕子の作品の印象からすると意外に思われる作品ばかりだと思います。

エンターテイメント性の強いこれまでの作品からするとちょっと異なる印象ではありますが、それでも読後にはやはり柚月裕子だった、と納得するのではないでしょうか。

コメント