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宝島 | 真藤順丈

しのびこんだ米軍基地で突然の銃撃。混乱の中、故郷(シマ)いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄(ふるさと)を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。長じて警官となり、教師となり、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞、三冠達成の傑作!( 上巻 : 「BOOK」データベースより : 参照 )


英雄が消えた夜。彼が手にしていたという「予定にない戦果」とは何か。故郷と基地。沖縄(ウチナー)とアメリカ。現在と過去。こちら側とあちら側l。境界線を越え、闘い、本土復帰に向けた大きな流れに翻弄されながら生き抜こうともがく三人がようやくたどり着いた、英雄が命を懸けた「秘密」とは。
第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞、三冠を達成した必読の書! ( 下巻 : 「BOOK」データベース より : 参照 )


『宝島』は、戦後沖縄史ともいうべき、長編のミステリー小説です。

「戦果アギヤー」とは、終戦後、アメリカ統治下時代の沖縄県で発生した略奪行為での、「戦果をあげる者」という意味だそうです(ウィキペディア : 参照)。

本書のオンちゃんはその「戦果アギヤー」の英雄であり、皆から尊敬される男の中の男でした。ところが、何故か警備の厳しいことで知られる嘉手納空軍基地への侵入を企て、その夜から行方不明になってしまったのです。

本書『宝島』は、1952年のその夜から、沖縄返還のなった1972年までの、グスク、レイ、ヤマコの三人のオンちゃんを探し求める二十年間を描いた物語です。

すなわち、戦後沖縄で起きた米兵による数多くの強姦等の凶悪犯罪や、コザ市近くの米軍施設で起きた毒ガス漏洩事件や軍用機の墜落事件などの沖縄で現実に起きた事件を背景に、三人の成長する姿が冒険小説のように描かれるエンターテインメント小説なのです。

1972年に沖縄が返還されました。本書を読むと、当時は何も知らなかったのだと、あらためて思い知らされます。沖縄でいろいろな事件があったことを事実として知っているということは、決してその事実のあった現実を理解していることではないということです。

本書『宝島』の著者である真藤順丈氏は、東京生まれで沖縄出身ではないそうです。沖縄へは三回、取材で行っただけだとありました。

そういう意味では本書で描かれている沖縄の人の感覚は事実かどうかは不明です。しかし、現地で取材をした作者の「私の書いたことに沖縄の人々が何らかの違和感を覚えることがあれば、批判を引き受ける必要があると思う」(「好書好日」 : 参照)という言葉は重みがあります。

本書『宝島』はオンちゃん失踪という謎を持つミステリー仕立てになっており、またいろいろな知識をもたらしてくれたことも含めてそれなりに面白い作品だった、ということは言えますし、本書も持つ熱量を否定するものではありません。

しかし、本書を作品として面白い小説だったかと問われれば、私の好みからは少々外れていた、と言わざるを得ません。

沖縄の状況説明が詳細に過ぎたり、基地の中のウタキ(聖域)などを物語に登場させる意味が今ひとつわからなかったりと、素直に物語世界に没入できなかったのです。

それでも、本書は第九回山田風太郎賞、さらには第160回直木賞を受賞しているほどに高い評価を受けている作品です。単に私の感性が追い付いていないだけというしかありません。

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