スポーツビジネスをめぐる利権と国家の威信が、東京でぶつかり合う。公営ギャンブル対象として、世界5カ国で開催されるマラソンレースの東京大会を妨害すべく、国際テロリスト集団が襲撃を仕掛けてきた。標的は日本人最速ランナーと、ランニングギアの開発をめぐる機密情報。警察庁は極秘に、特別編成の組織横断チームMITを立ち上げた。そのリーダーに抜擢された女性刑事は、アスリートを守れるのか。ランナーが、2時間切りという壁の向こうに見たものとは。(「BOOK」データベースより)
本書『アキレウスの背中』は、マラソンとIR(統合型リゾート)との問題を絡めた長編の警察小説です。
本書『アキレウスの背中』の主人公は、警視庁捜査三課に所属する下水流悠宇という警部補です。おりづるという珍しい苗字を持つ日本舞踊の師範でもあります。
彼女の上司が係長待遇の主任の間(まぎら)明警部補で、悠宇とともに警察庁警備局の乾徳秋参事官の指揮のもと、国際テロリスト集団に立ち向かいます。
具体的には全世界で全部で五回にわたって行われるマラソンレースの一つ、東京ワールド・チャンピオンズ・クラシック・レース(東京WCCR)の妨害行為を未然に防ぐ、ということです。
つまり、東京WCCRは国主催の公営ギャンブルであり、その妨害は日本国家のみならず複数国家の威信をかけたものとなると同時に国家的企業の利害が絡むことになるのです。
こうした事態は既存の捜査システムでは対応することが難しいために新たに考えられたのがミッション・インテグレイテッド・チーム(MIT)という捜査手法です。
そのうちの一つが下水流悠宇警部補を班長とするチームであり、メンバーとして前述の間警部補、警視庁捜査一課の本庶譲、警察庁警備局の二瓶茜、警視庁警備部の坂東隆信らがいます。
そして、事件の端緒として各種競技の選手の身体活動などを科学的に分析し、シューズやウェアの開発に資する施設であるDAINEXスポーツ総合研究所という施設と契約している嶺川蒼というランナーが脅迫を受けたというのでした。
ここで嶺川蒼というマラソンランナーが、現実の世界でのプロマラソンランナーである大迫傑選手がモデルだということです。
さらに言えば、本書の表紙の写真のモデルも大迫傑選手だというのには驚きました。
こうして下水流悠宇ら捜査員の捜査が始まりますが、普通の警察小説での地道な捜査とは異なる手法がとられているはずですが、そこらはよく確認できませんでした。
ただ、後半になってからのレースが始まってからの下水流悠宇らの活躍は、これまでの長浦京の物語と同じく迫力のあるものでした。
本書『アキレウスの背中』の作者長浦京氏は、冒険小説の分野でスケールの大きな、読みごたえのある作品を書かれる作家さんとして個人的にはかなり気になる作家さんで、出版された作品は『赤刃』という作品を除いて全部読んでいます。
そして、本書『アキレウスの背中』はその期待に見事答えてくれている作品であり、今後の活躍がさらに待たれる作家さんでもあります。

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