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桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介 | 梶よう子


「水草さま」と呼ばれ、周囲から親しまれている小石川御薬園同心の水上草介。豊かな草花の知識を活かし、患者たちの心身の悩みを解決してきたが、とんでもなくのんびり屋。そんな草介が密かに想いを寄せてきた、御薬園を預かる芥川家のお転婆娘・千歳に縁談が持ち上がる。初めて自分の心に気付いた草介はある行動に出るが―。大人の男として草介が一歩成長をとげる優しく温かな連作時代小説。(「BOOK」データベースより)


私が一番最初に読んだ梶よう子の作品が『柿のへた 御薬園同心 水上草介』でした。その続編の本書『桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介』がやっと出ました。

前作『柿のへた』と変わらずに、本書『桃のひこばえ』も非常に優しい筆致です。読んでいる間中、あたたかな気持ちで満たされながら、草介の行いの一つ一つにやきもきさせられます。

この頃、ハードな物語を読む機会が多かったので特にそう思うのかもしれませんが、とにかく読後感が爽やかです。ほっこりとした気持ちがとても心地良い時間でした。

当初は御薬園という舞台設定や主人公の性格設定もあって印象が優しいなのかとも思いましたが、この作者の作品を何冊か読んでみると本質的に優しい人なのだろうと思えて来ました。

梶よう子の作品は、薬園や朝顔、小鳥などの自然の描写を巧みに取り入れながら、人間の営みの中で起きる様々な出来事を、無理をしないで一つずつ解きほぐしていけばいい、と言っているようなのです。

どの作品も派手ではありませんが、心温まる物語として仕上がっています。悪人という悪人は出てこず、ゆっくりと時が流れ、それでいて単に優しい文章が続くのではありません。

中でも、本書『桃のひこばえ』での草介と千歳との掛け合い、角蔵とその妹美鈴の有りようはユーモアに満ちていて、ほのぼのと、そしてコミカルに物語が展開し、気持ちいいのです。

この後もいつまでも続いてほしいシリーズの一つです。

ちなみに、タイトルの「桃のひこばえ」とは「樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと」です。「元の幹に対して、孫のような若芽」ということで呼ばれているらしく、漢字を当てると「孫生え」だそうです。

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