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ことり屋おけい探鳥双紙 | 梶よう子

江戸は日本橋の小松町にある飼鳥屋(かいどりや)「ことりや」の女主人おけいを主人公とする連作の中編小説集です。

店で扱う対象が小鳥ということもあってか、梶よう子という作家らしい慈愛に満ちた暖かい視線で語られる物語です。

三年前に、亭主の羽吉は、夜になると胸元が青く光る鷺(さぎ)を探すと旅立ち、残されたおけいは「ことりや」を守り、一人暮しを続けていました。

ある日十五、六ほどの小鳥が好きとは思えない娘が次々と鳥を買っていきました。おけいはその娘に、もう小鳥は売ることはできないと告げるのです。

本作品の最初の物語である「かごのとり」は、こうして一人の娘の奇妙な行動の理由(わけ)が解き明かされていきます。

このあとに「まよいどり」「魂迎えの鳥」「闇夜の白烏」「椋鳥の親子」「五位の光」「うそぶき」と続きます。

どの物語も、店の客や永瀬という定町周りの話を聞き、鳥の絡む話の謎を解いていきます。そして、隠された人間模様を描き出します。

若干、物語のきっかけとなる出会いなど、偶然というのか、強引さが気になるところもあるのですが、それは小説の進行上、ある程度は仕方のないところではあるのでしょう。

それよりも、この作者の話の進め方の上手さなのでしょうか、優しく語られる物語の先行きが気になり、きっかけの強引さも不自然とまでは言えないとして気にならなくなってしまいます。

脇役として、まずは曲亭馬琴がおけいの後見人的立場で登場します。戯作者である馬琴は物書きの間に息抜きに訪れる客ではあるのですが、おけいの良き相談相手となっているのです。

次いで、先にも述べた北町奉行所の永瀬八重蔵という定町周りが登場します。この永瀬が持ち込む事件も、おけいが謎ときをしていくことになります。

この作家は「あさがお」であったり、「薬草」であったりと、自然の有りようを小説の中に取り入れ、展開していく作品が多いようです。その自然に対する作者の対峙のあり方が物語にもそのまま反映しているのだと思います。

毒が無い、と言えば確かにそうで、強烈な悪役も事件もありません。その点に物足りなさを感じる人もいるでしょう。

しかし、そのことを補う語りの上手さで語られる、人情ものの中でもより視点の優しいこの作家の物語は、一息つける時間でもあるのです。

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