この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。(「BOOK」データベースより)
東城大学医学部付属病院院長の佐伯は研修医の世良雅志をモナコ公国に派遣する。モナコのモンテカルロ・ハートセンターで外科部長を務める心臓外科医天城雪彦を東城大学付属病院の総合外科学教室に招聘しようというのだ。
何とかモナコで天城雪彦を捕まえた世良は天城を日本に連れて帰る。しかし、金をこそ手術の条件とする天城の態度は高階他の東城大学付属病院のスタッフに受け入れられる筈も無く、当初から天城は孤立する。
そうした中、天城の世話役を言いつかった世良は、心臓手術専門の病院「スリジエ・ハートセンター」設立を表明する天城のもと、東京国際学会での公開手術をの日を迎えることとなった。
本書の冒頭で世良が天城を東京に連れて帰るきっかけとしてルーレットを利用しています。この点には少々違和感を感じました。偶然にまかせた筋書きは私の感覚ではご都合主義的に感じるのです。
でも、その後の展開は実に面白い物語です。海堂尊という作家のいいところが前面に出た小説だと思います。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水晃一の活躍の場面でもそうですが、スーパーヒーローがその力量を遺憾なく発揮して困難な場面を乗り越える展開はカタルシスの最たる場面ではないでしょうか。本作もまた四面楚歌の中での天城の活躍が描かれます。
更に海堂尊の作品は舞台が病院であり、常に人の命が陰に陽にテーマとなっていて、読者に困難な問題提起が為されています。
本書でも経費を考慮すべきではない患者の命の救済と命を救うための環境の整備には多額の費用がかかるという両立困難な命題が示されています。
読者はそうしたカタルシスと人間の根源に関わるテーマとを示され、その答えに呻吟しつつ爽快感を味わうのです。
海堂尊という作家の面目躍如たる作品です。面白いです。

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