私立探偵・沢崎のもとに望月皓一と名乗る金融会社の支店長が現われ、料亭の女将の身辺調査をしてほしいという。が、女将は既に亡くなっており、顔立ちの似た妹が跡を継いでいた。調査対象は女将か、それとも妹か?さらに当の依頼人が忽然と姿を消し、沢崎はいつしか金融絡みの事件の渦中に。「伝説の男」の復活に読書界が沸いたシリーズ長篇第5作。文庫化に際し、14年間の沈黙と執筆の裏側を語る「著者あとがき」を付記。(「BOOK」データベースより)
本書『それまでの明日』は、原りょうの14年という間を置いての「沢崎シリーズ」最新作です。
私がこの作者原りょうの作品を始めて読んだのは2004年11月に出版された『愚か者死すべし』で、それを読んだのが2013年の7月だとメモに残しています。(本当はその前に読んだことはあるはずなのですが、かなり昔であり、タイトルも覚えていないので、上記『愚か者死すべし』を最初に読んだ作品ということにしておきます。)
そのメモには、「何か感情移入できない」とも書いているのです。五年も前に読んだ作品なので詳しい内容は覚えていませんが、ストーリーに何となくの違和感を持った記憶があります。
次に、世界的なミステリ叢書であるハヤカワ・ポケット・ミステリから沢﨑シリーズの第一作である『そして夜は甦る』が出されたのでそれを読み、かなり惹きこまれて読みました。この作品はチャンドラーの『大いなる眠り』を彷彿とさせる作品で、まさにハードボイルドであり、その細かな描写と共に主人公沢崎の魅力にあふれた作品として、面白く読んだのです。
次いで最新刊の本書『それまでの明日』に至ります。ところが、本書では、また一歩引いてしまっている自分がいます。どうにも物語世界に入り切れませんでした。はやり、ストーリー自体に不自然さを感じたのです。
冒頭の沢崎のもとに来た依頼人の描写や依頼人との会話、その後の、調査対象が既に死亡していた、というところまでは非常に期待できる流れでした。
しかし、その後の強盗事件に巻き込まれたあたりから何となくの違和感を感じ始めます。依頼内容を果たしていくうちに別の大きな流れに遭遇し、巻き込まれていくという設定は一つのパターンですが、そこに正体不明の若者が絡み、話は少々見えにくくなっていきます。
これは後で思ったことですが、本書のストーリーは特別な山があるわけではありません。途中ではっきりとしたイベントが起きるわけでもなく、ただ、新事実が少しずつ明らかにされていくだけです。
そうしたあまり大きな山の無い物語の運び方が、近頃のテンポの速い物語になれた身には物足りなく映ったのかもしれません。また、海津などというよく分からない人物の登場などもその理由なのかもしれません。
でも、「第二級活字中毒者の遊読記」の焼酎太郎さんが「でも14年ぶりですよ。細かいことはいいじゃないですか」とおっしゃることには大賛成です。七十歳を超え、なお本書のような作品を書かれるそのエネルギーには脱帽するばかりです。
本流のハードボイルドとして読み応えのあることは間違いないのです。是非続編を期待したいものです。

コメント