薬やその調合技術、秘具性具に精通するよろづ光屋の情ノ字。名に反して、情など一欠片もない彼は、他人を信じない。唯一心を許すのは白犬の鞆絵だけ。しかし、無垢な夜鷹・おしゅんにだけは惹かれた。市井の者から大奥まで身分を問わず、萬の悩みに耳を傾ける中で見出す人間の愚かさ、美しさ。五代将軍・綱吉の世を舞台に、性の深淵とまことの尊さを描いた江戸人情譚。(「BOOK」データベースより)
初めてこの作家の作品を読みました。図書館で目の前にあったので、名前だけは知っていた作家だったので試しに読んでみようと思ったのです。
一読して、春本かと思うほどに驚きました。それほどに濡れ場の描写が濃厚だったのです。
そこで改めて表紙を見てみると「性に絡め取られた人々が織りなす江戸人情譚」とありました。こうした文言には全く気付かずに借りたものでした。
とはいえ、エロ本というほどに猥雑でもないし、文章がさらりと流れていくので読み続けていたところ、次第に引き込まれていきました。
考えてみると、エロ度で言えば夢枕獏の「魔獣狩り」シリーズや菊池秀行の「魔界行」シリーズなどはエロい上にグロさまであるのですから、それに比べれば大したことはありません。
しかし、本書の場合、文章に艶があり、その分だけ官能度は増しているのかもしれません。
性に関する秘薬や秘具などを扱う主人公が、何故か美しいけれども、少し頭が足らない夜鷹おしゅんに魅かれ、引き取る羽目になります。
そのおしゅんや愛犬の鞆絵との心の交流を中心に、連作短編風に物語は進んでいきます。
途中、子堕ろしで名の高い女医師や、張形作りの名人など癖のある人物が絡んできたり、話の展開には飽きが来ません。
最後の方では、この作家の独特の文章の魅力に惹かれ、次の本はどれにしようかとまで考えていたほどです。
他の作品も読んでみたいと思わせる作家でした。

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