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ヘルドッグス 地獄の犬たち | 深町 秋生


「警察官の俺に、人が殺せるのか?」関東最大の暴力団・東鞘会の若頭補佐・兼高昭吾は、抗争相手を潜伏先の沖縄で殺害した。だが兼高はその夜、ホテルで懊悩する。彼は密命を帯びた警視庁組対部の潜入捜査官だったのだ。折しも東鞘会では後継をめぐる抗争の末、七代目会長に就任した十朱が台頭していた。警視庁を揺るがす“秘密”を握る十朱に、兼高は死と隣り合わせの接近を図るが…。規格外の警察小説にして注目の代表作。( 新刊書の内容紹介「BOOK」データベースより )


本書『ヘルドッグス 地獄の犬たち』は、ヤクザ組織に潜り込んだ潜入捜査官の姿を描くバイオレンス小説です。

続巻として『煉獄の獅子たち』が出版されていますが時系列としては本書の方が後であり、暴力に満ちた作品でありながらも哀しさに満ちた物語ですが、かなり面白く読んだ作品でした。

本書は当初は『地獄の犬たち』として刊行されていた作品が、文庫化されるに際し『ヘルドッグス 地獄の犬たち』と改題されたものです。

本書『ヘルドッグス 地獄の犬たち』の主人公は本名を出月梧郎という潜入捜査員です。本書冒頭から東鞘会系神津組若頭補佐の兼高昭吾として、同じ組員の室岡秀喜と共に、抗争相手の男を沖縄で惨殺する場面から始まります。

そして殺害行為の後、一人嘔吐し、自分の行為に懊悩するのです。

この兼高昭吾は、東鞘会会長の十朱義孝の抱える秘密を探るために、武闘派である神津組組長の土岐勉のもとに送り込まれ、その後、ボディガードとして十朱義孝に近づくことに成功しています。

兼高は本来正義感の強い男であり、警察官としての自分と潜入捜査官としての任務上行った犯罪行為との狭間で押しつぶされそうになっています。

ただ、彼を送り込んだ直属の上司の阿内将との連絡先でもあるセラピストの店に通うことだけが息抜きだったのです。

本書『ヘルドッグス 地獄の犬たち』は暴力団の世界だけでなく、さらには兼高を送り出した組織犯罪対策特別捜査隊(組特隊)も暴力の世界でしか生きられないような男たちの集まりである設定など、本書全体が暴力の香りに満ち溢れています。

そうした暴力こそ正義というヤクザ社会の中で目的を達するためには主人公自身も暴力の嵐の中に身を置く必要があり、そうした環境に染まっていく自分を見つめているしかないのです。

そんな苦悩しつつも潜入の目的を果たそうとする主人公の姿は悲壮感すら感じられるのです。

こうして、本書全体が暴力に彩られることになります。作者の深町秋生の作品自体がそもそも暴力的ではあるのですが、本書は特にその傾向が強く感じられます。

また、登場人物も多く、ヤクザ内部での抗争や警察内部での権力争いなど、人間関係もかなり複雑になっています。

だからと言って、本書が読みにくいわけではなく、深町秋生の文章はなじみやすく調子よく読み進むことができるのです。

近頃、この作者の作品を読む機会がかなり増えてきているような気がします。

インパクト十分な本書、そして時系列上は本書よりも前の話である続巻『煉獄の獅子たち』も本書以上にバイオレンス十分の話であり、エンターテイメントに徹した作品です。

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