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輪違屋糸里 | 浅田 次郎


文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在である輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。「壬生義士伝」に続き、新選組の“闇”=芹沢鴨暗殺事件の謎に迫る心理サスペンス。(上巻 :「BOOK」データベースより)


芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の恋人吉栄、新選組の屯所、八木・前川両家の女房たちは、それぞれの立場から、新選組内部で深まる対立と陰諜を感じ取っていた。愛する土方のため、芹沢暗殺の企みに乗った糸里の最後の決意とは?息を飲むクライマックスと感動のラスト。巻末に著者と輪違屋当主の対談を収録。(下巻 :「BOOK」データベースより)


本書『輪違屋糸里』は、さすが浅田次郎と思わせる筆致の長編の時代小説です。

壬生義士伝」があって、その四年後に本書があり、そしてその七年後に「一刀斎夢録」が書かれています。新撰組三部作が完了した、と言って良いのでしょう。作者の言葉を確認したわけではないのですが、どこを見ても三部作とありますので、これ以上浅田版新撰組は書かれないと思うと残念です。

「壬生義士伝」程の「泣かせ」の場面は殆どありませんが、それでも京は島原の傾城の言葉は涙を誘います。

本のタイトルのわりには糸里メインではなく、あくまで新撰組の芹沢鴨暗殺事件をを描いた物語でしたが、島原の最高位である太夫の次の地位にある天神の糸里は、侍としての芹沢や侍たらんとした近藤や土方に対する誇りある女の象徴としての存在でもあったように思えます。

その芹沢鴨暗殺事件を描き出す手法がよく出来ていて、中心に京都の花街である島原の、そして新撰組の屯所になった八木家前川家の夫々の女を配置し、女目線での新撰組を中心として、永倉新八沖田総司他の独白を挟んで、客観的目線での新撰組を浮かび上がらせています。

ここで語られる芹沢鴨像やその芹沢像に基づく暗殺事件そのものの解釈については異論があるところでしょう。しかし、一編の物語としての面白さは素晴らしいものがあります。

この浅田版新撰組三部作を通して語られているテーマとして「侍」という存在があります。

侍になりたかった百姓の集団としての新撰組、その姿は「壬生義士伝」で吉村貫一郎を中心に強く語られていましたが、本書では「真の侍」である芹沢鴨との対峙を描くことで最も強く描かれていたと思います。

これまで、芹沢鴨をここまで描いた物語を知りませんし、更には新見錦平山五郎の人物像をも詳しく描写しているのもまた新鮮でした。

ストーリーテラー浅田次郎の作品をもっと読み続けてみたいと強烈に思わせられた作品でもありました。

コメント

  1. 一期一会 より:

    新撰組
    読みたいな、芹澤 鴨と花街の女性に興味を感じます。
    以前読んだ、なかにしれいの「長崎ぶらぶら節」の舞台になった丸山界隈を昨年歩いてきました。
    そこに出てくる女性の強さに引かれました。
     高知の宮尾登美子が描く世界も多くが花街を扱っていました。宮尾登美子の育った環境が花街のようです。
     浅田次郎は「プリズンホテル」のような世界に身を置いたことがあるのでしょうか。作家だからいろいろな世界をリアリズムある物語に仕上げるのですね。

  2. 雑読者 より:

    いつも有難うございます。
    なかにしれい作品は読んだことはありませんが、評判は良かったですね。
    宮尾登美子は「鬼龍院花子の生涯」は一気に読んだ記憶があります。
    五社英雄監督の映画も、原作ものの映画としてはとても面白く見たものです。
    他に「櫂」か「陽暉楼」かを読んだのですが、はっきりとしません。
    もう、随分前のことなので内容も覚えてはいませんが・・・。