活発化した梅雨前線の影響で大雨が続く東京を、謎のテロ組織が襲った。自衛隊統合情報部所属の情報官・真下は、テロ組織を率いる人物の居場所を突き止めるべく奔走する。敵の目的もわからず明確な他国の侵略とも断定できない状態では、自衛隊の治安出動はできない。政府が大混乱に陥る中で首相がついに決断を下す―。敵が狙う東京都市機能の弱点とは!?日本を守るための死闘が始まった。(「BOOK」データベースより)
前作の『生存者ゼロ』はパニック小説とても分類できる物語でした。思いもよらない存在による人類に対する危機を未然に防ぐべく感染症学者と陸上自衛官とを中心に活躍する話で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した作品です。しかし、大賞受賞作ということでハードルを高くして読んだためか、若干期待外れとも言える作品でした。
本作は、日本国憲法9条の解釈及びその解釈に基づく運用が大きく変わろうとしている今の時代背景を見越して書かれたのかもしれませんが、じつにタイムリーな作品と言えると思います。
前作とは異なってミリタリーサスペンスと言って良いのでしょう。自衛隊の現下の状況を踏まえ、法律論までかなり踏み込んで書かれています。
序盤は正体不明のテロリストに対する政府の姿勢、行動を法律論として展開し、自衛隊出動の法的根拠を探しあぐねる姿が描かれます。その間にもテロリストに対峙している警察は次々と撃破され、死者は増すばかりです。ここで、後に野党らから追及される恐れを考慮し及び腰になる政治家らの姿が描かれるのは、こうした状況を描く小説のいつものパターンだと言っても良いでしょう。本書は法律論の展開がより詳しい点に特色があるかと思います。
そして、主人公に自衛隊の分析官を持ってきているところが新鮮です。ただ、情報分析官が第一線で活躍するわけにはいかないところが弱点で、その代わりとなる部下を配置しているのですが、これはそうしなければならなかった、というところなのでしょう。
ふつう、テロリストにはテロリストなりの論理があり、それなりの主張が展開されるのが普通ですが、本書ではそうした展開ではなく、ハン大佐という個人の持つ理由を直接の理由としています。冷徹で優秀な軍人であるハン大佐の魅力が本書の見どころの一つと言えるかもしれません。
情報分析官の真下とハン大佐の対決はかなり面白く読むことが出来ました。
個人的には前半の議論の部分は未知の論点もあり、引き込まれて読みました。後半にはアクション満載の展開になるのですが、それはまた前半とは違った展開で手に汗握る面白さがあります。
個人的には前作よりも面白い作品だと思いました。

コメント
『生存者ゼロ』は読みました。
siroさんの書評でこのゼロの迎撃作品をぜひ読んでみたいですね。
実践体験の無い自衛隊がどこまで力があるのか疑問です。
自衛隊の予算が生きているかも疑問です。
ならば、ITを屈指する戦略があるように思います。
でも、無駄な戦はして欲しくはありません。
> 『生存者ゼロ』は読みました。
> siroさんの書評でこのゼロの迎撃作品をぜひ読んでみたいですね。
この本も内容が現実的かどうかは別として、物語の世界に浸ることが出来ればかなり面白い本だと思います。
> 実践体験の無い自衛隊がどこまで力があるのか疑問です。
関係者の言葉によるとかなりのものだと聞いたことがあります。
真偽は不明ですが。
> でも、無駄な戦はして欲しくはありません。
全く同感です。