はるかな未来、太陽がその寿命を終えようとする頃、地球は植物の天下となっていた。
自転をやめた地球は昼の世界の一つの大陸を一本の木が覆われており、その頂はツナワタリという「巨大な植物のクモ」の作りだす糸によって「月」にまで到達しているのだった。
植物は進化し、まるで動物のように擬態して他の植物や昆虫、そして人類を捕食して生きていた。
動物はトラバチを始めとする数種類の昆虫とほんの少しの人類だけが生き残っていて、小さなグループに分かれた人類は樹上でひっそりと生きているだけだった。
ある人類のグループの一つのリーダであるリリヨーは掟に従い、自らの死を迎えるべく森の頂きで莢に入って待っているとツナワタリによって月世界へと運ばれてしまった。
一方、地上に残った問題児グレンは仲間からはじき出され、一人で森の中をさまようのだった。
当初は五編の短編であったものが一冊の本として纏められたものだそうで、短編小説部門でヒューゴー賞を受賞しています。
そのイマジネーションの世界は素晴らしく、特に序盤で描かれる植物に覆われた地球の姿の描写は驚異的です。植物の世界とはいっても、ここの植物は姿かたち、その動作に至るまで動物と同じように危険です。
その、地表を植物に覆われた未来の地球で生き残っている人類のあるグループの冒険が描かれます。
SFと言えば科学的な設定のもと、宇宙を飛び回るものもありますが、本書のようにイマジネーション豊かに一つの世界を創造し、その中である主体(人間とは限りません)が活躍するものもあります。
滅亡間近の地球という環境の中で、逞しく生きていく主人公たちであり、そうした人類の姿が描かれています。地球の主(ぬし)となった植物の中で動き回る主人公達の前に、過去、その延長上にある今、そして地球の滅亡という未来像が示されます。
主人公たちの「生」のために出した結論は何か、「生」とは何か、が問われていると思われます。
こうした設定自体が受け入れられないという人には向かない物語です。でも、冒険譚が好きな人には面白いと思います。本書の場合、冒険小説とSFとの合体と言ってもいいかもしれません。

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