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日輪の遺産 | 浅田次郎


終戦直前、帝国陸軍がマッカーサーから奪った時価二百兆円に上る財宝が極秘裏に隠匿された。それは、日本が敗戦から立ちあがるための資金となるはずだった。そして五十年後、一人の老人が遺した手帳がその真相を明らかにしようとしていた―。終戦時の勤労動員の女生徒たち、密命を帯びた軍人など、財宝に関わり、それを守るために生き、死んでいった人々の姿を描いた力作。心地よい感動があなたを包む。(「BOOK」データベースより)


マッカーサーの財宝をめぐる冒険活劇小説だと思っていたら、全く違う作品でした。財宝の探索ではなく、財宝の秘匿について語られる物語だったのです。

丹羽明人は競馬場で知り合った老人の最後を看取ることになってしまう。

ボランティアの海老沢と共にその老人から渡された手帳の内容に驚きながらも、老人の大家だという大地主の金原と共に一夜を明かすこととなった。

次第に手帳の内容について虚構とばかりも言えない事実の符合に気付いて行く。

終戦時、五人の日本軍の軍首脳から密命を受けた近衛師団の真柴司郎少佐と東部軍経理部の小泉重雄中尉は、歴戦のつわものである望月庄造曹長と共に密命を実行すべく任務にまい進します。

一方で、現代の、財宝の秘密について持て余しつつある金原を中心とする三人の行動が、頁が進むにつれリンクしていきます。この流れはいかにも浅田次郎作品です。

しかし、本著作は著者のごく初期の作品のようで、残念ながら浅田次郎の作品にしては完成度が今一つと感じました。

秘密を最小限のものとするために少女たちを使って目的物を秘匿しようとする真柴達ですが、夫々の場面での登場人物の行動が今一つ納得できない個所が少なからずあるのです。

同様の手法で語られる本作品の七年後に書かれた「壬生義士伝」などは全くそうした印象を持たなかったし、文章にしても非常に美しく、十分に練り上げられたものでした。

だからこそ、その力量で本作品を書いてもらいたいと思ったのです。

そうすれば、最終場面でのマッカーサーの行動にも疑問符をつけなくてもよかったでしょうし、一番最後に描写されている少女たちの行動についても、もっと感情移入出来る物語として仕上がっていると思うのです。

勿論、素人読者の勝手な要望ですが、あとがきでの「いわゆる『若書き』である。」と書かれている作品に対しての一読者の勝手な思いでもあります。

浅田次郎と同じ年に生まれた私にとっても、「戦争はわずか六年前の現実でありながら、遥かな歴史であった」のです。特に感慨深く読ませてもらいました。

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