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幼馴染みのおまつとの約束をたがえ奉公先の婿となり主人に収まった吉兵衛は、義母の苛烈な皮肉を浴びる日々だったが、おまつが聖坂下で女郎に身を落としていると知り…(「夜明けの雨」)。兄を殺した仇を九段坂で張り込む又四郎に国許より兄嫁自害の知らせがもたらされた(「月凍てる」)。江戸の坂を舞台に人びとの哀歓を掬い取った人情時代小説の傑作四編。(「BOOK」データベースより)
「夜明けの雨-聖坂・春」、「ひょろ太鳴く-鳶坂・夏」、「秋つばめ-逢坂・秋」、「月凍てる-九段坂・冬」の四作が収められた短編集です。
当初の印象は藤沢周平作品を読んだ当初と同じく、なんともとりとめのない話だというものでした。日常を日常として何の山場もなく終えてしまった印象だったのです。
しかしながら、藤沢周平作品がそうであったように、読了後はその文章が妙に心に残りました。
けっして派手ではなく、丁寧に語られるその文章は藤沢周平の「橋ものがたり」を思い起こします。
この点は多くの読者がそうであったらしく、「橋ものがたり」での橋に代わって「坂」をモチーフとしていると感じるのです。
その印象は、作者があとがきで書かれているように、坂と川の町だった江戸では「坂」と「川」が結界だったことが意識されているそうですから間違ってはいないということでしょう。
ともあれ、この作家の他の作品を読んでみようと思います。

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