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夢の花、咲く | 梶よう子


朝顔栽培が生きがいの気弱な同心・中根興三郎は、植木職人が殺された事件の探索を手伝うことになった。その直後、大地震が発生し江戸の町は大きな被害を受け、さらに付け火と思われる火事もつづいた。無関係に見えるいくつかの事件の真相を、興三郎は暴くことができるのか。松本清張賞受賞作の姉妹編。(「BOOK」データベースより)


先日読んだ「一朝の夢」の続編、というより時間的にはその少し前の話です。

 

ある殺人事件が起きるが、その被害者は植木職人ではないかと思われた。中根興三郎は知り合いの植木職人である留次郎やその隣人吉蔵に尋ねるがなかなかその身元が分からない。

一方、この事件を調べる定町廻り同心の岡崎六郎太は、吉蔵の娘お京と結婚することになっていたが、その吉蔵に疑いがかかってしまう。

ところが、その探索の途中で安政の大地震が起き、江戸の町は壊滅してしまうのだった。

 

相変わらず丁寧な文章で、前作には出てこない吉蔵やその娘お京、それに岡崎六郎太などを中心に物語は進みます。

地震後の江戸の町の状況は色々な小説でも取り上げられていたと思うのですが、この本のようにお救い小屋の状況等までを舞台に組み込んで描写している物語は私が読んだ範囲では無かったと思います。

興三郎の亡き兄の許嫁で今は材木問屋の内儀となっている志保と再会し共に被災者を助けたり、周三郎という絵師が登場し興三郎と絡んだりと、結構バラエティに富んだ展開です。

ただ、物語自体は少々展開にひねりが無い印象はあります。例えば、敵役の商人の非道さですが、いくらなんでもそうした行為をしていたら商人として終わっていはしないか、という不自然さを感じたことでしょうか。

しかしこの作家の作品には、そうした瑕疵を乗り越えての面白さがあります。それはやはり主人公の中根興三郎という人物のキャラクターに負うところが大きいのでしょう。

下男の藤吉に助けられながらも必死で朝顔を育てるその優しさは、読者まで暖かな心根にしてくれるようです。

この後続編がかかれるかどうかは分かりませんが、出来れば読みたいと思うのは私だけではないと思います。

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