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豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には編纂補助と監視、七年前の事件の真相探求の命が課される。だが、向山村に入った庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになり…。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟を穏やかな山間の風景の中に謳い上げる、感涙の時代小説。 –このテキストは、hardcover版に関連付けられています。(「BOOK」データベースより)
この作品も十分な読み応えを感じる作品でした。
主人公である戸田秋谷の達観とも言うべき心根や、その息子郁太郎の武士の子としての心、そして本作品の語り手という立場の檀野庄三郎の、秋谷や秋谷の娘薫への想い等々、登場人物それぞれの調和が読んでいて心地良く感じられました。
全体的にも、藩の過去の秘密に迫る家譜をめぐる謎ときの様相もあり、物語として読み手の興味をかきたてるもので、物語世界に没頭して読み進めることが出来ました。
更には例えば田舎の情景描写にしても読み手の心をを穏やかにするものですし、秋谷の家を「家の中に清々しい気が満ちている・・・」という言葉で表わし、秋谷やその家族がどのような人柄あるのかまでこの一言で表現しているなど、読み進め易い文章でもありました。
特に秋谷の「若かったころの自分をいとおしむ思い・・・」という台詞には心を打たれ、このような表現もあるのかと、ただただ感じ入るばかりでした。
第146回直木賞受賞作品です。

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