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朽ちないサクラ | 柚月裕子


警察のあきれた怠慢のせいでストーカー被害者は殺された!?警察不祥事のスクープ記事。新聞記者の親友に裏切られた…口止めした泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体で発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた。 (「BOOK」データベースより)


『佐方検事シリーズ』の柚月裕子による県警広報広聴課の事務職員の女性を主人公とする警察小説で、タイトルの『朽ちないサクラ』から想像できるテーマそのままに描かれているミステリーです。

本書『朽ちないサクラ』は、2012年に千葉県警で実際に起きた事件をもとに書かれたものだそうです。とは言っても、相談を受けた警察が被害届受理を先延ばしにした、という舞台設定を借りたと思われるだけで、あとは作者の創作によるものです。

やはりこの作者の物語はそれなりの読み応えがあります。「それなりの」と書いたのは、若干の不満があるからです。

まず第一点。これは不満として取り上げるほどのこともないのですが、主人公の女性を警察官ではなく事務方にした理由がよく分かりません。

この作者が尊敬するという横山秀夫には警察内部の一般的ではない部署を表に出した作品がありますが、そこではその部署であることに物語の必然性を持たせています。

でも本書『朽ちないサクラ』ではそういう点では必然性はありません。ただ、物語の締めとして泉の為した決心がかかわると言えないこともなく、これを書きたかったというのであれば話は別です。

ならばもう少し事務方と設定した理由を書いてほしかった。

そして第二点、これが大きい。読後にネット上のレビューを読むとどうも同様の印象を抱かれた方が多いようです。

それは、ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、本書の事件の犯人像と言いますか、事件解決の処理の仕方を素直には受け入れることができないことです。

当初から荒唐無稽なアクション小説であるのであれば格別、本作品はそれなりのリアリティを持っているミステリーとして書かれているために、本書の結論は受け入れにくいのです。

せっかくの面白い物語が最後でしぼんでしまいました。この点をもう少し処理してあれば不満点の第一だ大した問題ではなかっただけに残念でした。

まあ、一番目の理由は私の個人的な好みにもかかわることなのであえて書くほどではないことかもしれません。

でも、二番目の理由は物語の根幹にかかわることでもあります。この点だけが残念ではありました。

しかし、基本的にこの作家の紡ぎだす物語はエンターテインメント小説としての面白さを期待でき、またその期待に十分に応えてくれていると思います。今後の活躍にも期待したいです。

雑読者

熊本市在住の爺さん。 活字中毒の乱読、雑読派。 SF小説、冒険小説などを特に好む。 音楽はかつてのフォーク好き。洋楽はブラフォー、ビートルズ他。

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