任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった…。(「信義を守る」)(「BOOK」データベースより)
本書『検事の信義』は『佐方貞人シリーズ』の第四巻目で、四編からなる連作の短編小説集です。
「裁きを望む」、 「恨みを刻む」、 「正義を質す」、 「信義を守る」という四話です。
柚月裕子という作家は、自分の思う「正義」という観念を正面に掲げ、それをはばからずにかざしているようです。
それをワトソン役の増田事務官目線で描いてあるのです。
それは本書が属する『佐方貞人シリーズ』というシリーズ自体がそうで、シリーズの全体を「罪はまっとうに裁かれなければならない」という信念が貫いています。
そして、第一話「裁きを望む」では一事不再理ということを、第二話「恨みを刻む」では単純な覚醒剤事案と思われていた事案が意外な展開を見せます。
第三話「正義を質す」では検察という組織が抱える裏金問題が、第四話「信義を守る」では介護の問題が取り上げられています。
こうして、本書 『検事の信義』 でも、気鋭の検事としての佐方貞人は検察庁内部での評価など考慮することなく、本当に罪を犯した者が見合った刑罰を受けるべきだという信念のもと公判に臨むのです。
その姿が、読者の心をうち、爽快感と少しの感動をもたらしてくれる心地の良い物語となっています。