おすずという許嫁がありながら、子持ちの後家と深みにはまり、呉服太物店を勘当された総領息子の信太郎。その後おすずは賊に辱められ、自害して果てた。「一度だけ」とおすずが身を預けてきたあのとき、願いをきいてあげていたら…後悔の念を抱きながら、信太郎は賊を追う―。平成14年度中山義秀文学賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
本書は「おすず」、「屋根船のなか」「かくし子」「黒札の女」「差しがね」の五編からなっています。
主人公の信太郎は、引手茶屋千歳屋の内儀おぬいと深い仲になったことから、実家の呉服太物店の跡継ぎであったにもかかわらず、親からは勘当もされていた身分でした。
そして表題作でもある「おすず」は、そうした信太郎の不行跡から破談になった筈の許嫁であった“おすず”にからんだ話です。
信太郎を好きだったおすずは、嫁ぐ前に一度だけ会って「お嫁さんにして欲しい」と願います。これを断っていた信太郎ですが、おすずは家に押し入ってきた賊に犯され自殺してしまいます。
信太郎は、おすずの死には自分にも責があると、賊の跡を追うのです。
このように、本シリーズでは各話で起きる様々な事件や出来事に対し、信太郎が活躍し、これを解決していきます。
おすずの死や、おぬいに対する自分の態度に負い目を感じている信太郎を取り巻く世界が丁寧に描写されています。
また、芝居小屋などが物語の舞台になっていることもあってか、話自体が実に粋な雰囲気をまとった仕上がりとなっています。
実に読みやすい小説です。続編も続けて読みたいと思います。