警視庁捜査一課特命捜査二係の鷺沼は、十年前の死体遺棄事件を追っている最中、自宅マンションの外階段で刺された。一命は取り留めた鷺沼に、神奈川県警の宮野が、十二年前に起きた不可解な殺人事件の概要を告げる。新たな仲間とともに捜査を始める鷺沼と宮野。やがて捜査線上にある人物が浮かぶが―。真実のため、組織と犯罪に闘いを挑む刑事たちの熱い姿を描いた「越境捜査」シリーズの第4弾。この巨悪、容易には斃れない…。(「BOOK」データベースより)
本書は「越境捜査シリーズ」の四冊目の物語です。シリーズ一冊目の『越境捜査』は神奈川県警と警視庁の軋轢の中、鷺沼や宮野たちが単独で事件解明に走り回る、という舞台設定も面白く、物語もシリアスで結構面白い作品でした。
しかし、本書はその思いからするとかなり期待とは違った印象でした。
冒頭から鷺沼が刺されてしまう、という導入は良いのですが、そのためか当然鷺沼は現実にはあまり動き回れません。井上や宮野たちの持ってくる情報から全体像を推理することがメインになります。結局、本書の舞台は鷺沼のいる場所のみに限定され、空間的な広がりはほとんど感じられませんでした。
物語も十年前という時間の壁を設けて、立証を困難にする、そのことは良いのですが、どうしても事件解明に少しずつ無理を感じてしまうのです。
この作者の「天空への回廊」「未踏峰」「春を背負って」などの迫力のある読み応えのある作品を読んだ後なので、とても辛口に読んでいるのかもしれませんが、少々残念な読後感でした。
この作者であればもう少し、スケールの大きな物語展開を期待していただけに、アームチェア・ディテクティブとまでは言わないまでも、少々小じんまりとした印象は残念な物語でした。