穏やかな研究者の夫。素直に育った息子。幸せな家庭に恵まれた神村奈々の真の姿は対象人物の「国外処理」を行う秘密機関の工作員だ。ある日、夫が身元不明の女と怪死を遂げた。運命の歯車は軋みを立て廻り始める。次々と立ちはだかる謎。牙を剥く襲撃者たち。硝煙と血飛沫を浴び、美しき暗殺者はひとり煉獄を歩む。愛とは何か―真実は何処に?アクション・ハードボイルドの最高傑作。(「BOOK」データベースより)
暗殺をその職務とする女主人公、という設定のアクション小説と言えば、まずは本書の作者でもある大沢在昌が挙げられるでしょう。
大沢在昌にはほかにも『明日香シリーズ』や『魔女シリーズ』といった女性を主人公としたアクション小説を書かれています。
『魔女シリーズ』では娼婦の住む島で暮らしていた元娼婦で、今は裏社会でのコンサルタントをしている女水原、『明日香シリーズ』では一度は死んだものの能移植を受け生き返った女刑事明日香が主人公です。
そして、本書『ライアー』では国外での暗殺をその職務とする国家機関員神村奈々が主人公です。
夫と一人息子に囲まれ幸せな生活を送っていた主人公の神村奈々ですが、ある日夫が知らない女と共に突然の死を迎えます。
夫は何故に死んだのか。もしかして自分の仕事故に殺されたのではないか。主人公の神村奈々は夫の死の真相を知るために動き始めますが、そこには思いがけない真相が隠されていました。
脳移植や娼婦の暮らす島から来た女、というよりは要人暗殺を職務とする国家機関所属の女という方が、少しなりともリアリティーがあるかもしれません。
とはいえ、本書も普通ではない設定という点では前述の二作とそう変わるものではないでしょう。
ただ、前二作の内容をあまり覚えていないのではっきりとは言えませんが、本書の主人公の心象、その変化の描写はより繊細になっているのではないかと思われます。
作品としてアクションのあり方さを考えるだけではなく、主人公の内面の描写をより重視しているのかもしれません。
1995年の『明日香シリーズ』、2006年の『魔女シリーズ』、そして2014年の『ライアー』と出版年次が新しくなるほどに人物の描写がより深くなっていると感じるのは、手元に作品がないことからくる幻想でしょうか。
一番新しい作品えある本書『ライアー』になって家族を登場させ、家族との関係を考える主人公、という設定自体、作品の進化だと言えるのかもしれない、と考えるのです。