フリーのPRマン・漆田亮は、得意先の日野楽器から、ある男を探してくれと頼まれる。男の名はサントス、二十年前スペインの有名なギター製作家ホセ・ラモスを訪ねた日本人ギタリストだという。サントス探しに奔走する漆田は、やがて大きな事件に巻き込まれてゆく。直木賞を受賞した、著者の代表傑作長編。第96回直木賞、第40回日本推理作家協会賞、第5回冒険小説協会大賞受賞作。(上巻 : 「BOOK」データベースより)
サントスとダイヤが埋められたギター「カディスの赤い星」を追ってスペインに渡った漆田は、ギター製作家ラモスの孫娘・フローラが属する反体制過激集団FRAPのフランコ総統暗殺計画に巻き込まれる…。スペイン内戦時の秘密を軸に、日本とスペインを舞台に展開される、サスペンスにみちた国際冒険小説。第96回直木賞、第40回日本推理作家協会賞、第5回日本冒険小説協会大賞受賞作。(上巻 : 「BOOK」データベースより)
随分と前からこの作家の作品を読まなければと思いながら、何故か今日まで手に取ることなく過ごしてきました。
ところが過日、逢坂剛原作の「MOZU」というテレビドラマが放映されてその面白さにはまり、更にその頃図書館で見つけた『平蔵の首』という、あの長谷川平蔵を主人公とする作品を読んで逢坂剛の面白さにはまりました。
となれば逢坂剛の代表作のひとつである本書をまず読もうとなったのです。結果は期待以上のものでした。
当初のこの作品はスペインを舞台にした冒険小説だと聞いていたので、船戸与一の『山猫の夏』のようなある種のヒーローが活躍する冒険活劇小説だと思っていました。しかし、そうではなく、どちらかと言えば藤原伊織の作品に近い、普通の人間の日常が描かれていたのです。
つまり本書『カディスの赤い星』は、普通の人が普通の生活を送って行く中で非日常の世界に巻き込まれ、テロリストや警察など暴力のプロともいえる人間たちに対して敢然と立ち向かっていく、その姿が軽妙な会話にのって綴られていく冒険小説です
本作品が藤原伊織の作品と異なるのは、藤原作品にみられる文章の情緒性でしょうか。本作品がそうなのか、逢坂剛という作家がそうなのかはまだ分かりませんが、少なくとも本作品では主人公の情緒的側面は描写していないようです。
そういう意味でも本作はハードボイルド作品とも言えるかもしれません。面白いハードボイルド作品には欠かすことのできない会話の妙も満喫できます。
特に漆田と女性との軽妙な会話は小気味良ささえ感じられます。主人公の漆田の軽口は日本の小説ではあまり見られないかもしれません。キザになるぎりぎりの線でしょう。
東直己の『ススキノ探偵』とはまた違って、冗舌とはまた異なる小粋とも言えるタッチです。
個人的には終盤の筋立てが少々気にはなりました。もう少しシンプルな方が好みなのです。どんでん返しの面白さも分かるのですが、できれば単純に決めて欲しい気もしました。
とはいえ、今では大御所とも言える逢坂剛の、日本とスペインを舞台にしたスケールの大きな物語である本作品は、十分な読みごたえのある面白い物語でした。
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小気味いい会話は読んでいて楽しいですね。
逢坂剛の作品はまだ手にしたことが無いように思います。
そういいながら、一度ぐらい読んだのかな、ボケとは無縁であると思いつつ、思い込みに対して反省は多いのです。
> 小気味いい会話は読んでいて楽しいですね。
> 逢坂剛の作品はまだ手にしたことが無いように思います。
私も逢坂剛の作品はあまり読んでいないので大きなことは言えません。