Categories: 宮本 昌孝

剣豪将軍義輝 | 宮本 昌孝


十一歳で室町幕府第十三代征夷大将軍となった足利義藤(のちの義輝)の初陣は惨憺たるものだった。敗色濃厚と知るや自ら城に火を放ち逃げ出す幕臣たち。一人戦場に挑んだ己の無力。既に将軍の権威は地に墜ち、世は下克上の乱世を迎えていた。窮地で旅の武芸者の凄まじい剣技を目撃した少年将軍は、必ずや天下一の武人になると心に誓う。圧倒的迫力、一気読み必至の歴史巨篇ついに始動。(上巻 : 「BOOK」データベースより)


三好長慶に京を追われ、近江の仮御所に逃れた将軍義輝は、剣の道を究めるべく武芸者・霞新十郎として廻国修業の旅に出る。供は忍びの浮橋ただ一人。剣聖・塚原卜伝に教えを請うべく鹿島に向かった義輝は、旅の途上で斎藤道三、織田信長ら乱世の巨星と宿命の出会いを果たす。さらに好敵手・熊鷹や愛しい女性との再会も…乱雲のなか、己の生き様を求める剣豪将軍、波瀾万丈の思春期。(中巻 : 「BOOK」データベースより)


政権の頂点に立つ三好長慶と和睦が成立、京に落ち着いた義輝は、乱世に終止符を打つべく、壮大な奇策を立てた。盟約を結ぶ織田信長、上杉謙信らの軍団と倭寇の大船団とで三好一党を挟撃し、討つ。しかしその構想が長慶麾下の野心家・松永弾正久秀に洩れた。三好兄弟を次々謀殺、自ら覇権を握らんとする久秀は義輝の器量を懼れ、ついに暗殺を決意する。炎風のなか義輝が揮う秘剣一ノ太刀。(下巻 : 「BOOK」データベースより)


足利義輝は実在の将軍ではあるけれども、これまでは戦国時代の織田信長から豊臣秀吉へと権力が移るその過程が描かれるときに、剣の使い手ではあるけれども凡庸な将軍として描かれることが多く、そのような将軍として読み始めたので若干の違和感を感じてしまいました。

この本は冒険活劇小説です。その主人公が足利義輝であり、塚原卜伝や上泉伊勢守信綱の薫陶を受け、剣聖として成長していくのですから、話についていきにくく感じたのだと思います。

主人公は美濃の斎藤道三や織田信長に会い、人間として成長していきます。物語としては面白いのです。でも、剣聖である足利義輝が結局は戦の中で命を落とすというその史実が頭から離れず、世界観に入れませんでした。

また、将軍足利義輝が戦での死に至るまでの歴史上の出来事があまりに詳しく描写してあるため、歴史の知識のない私はついて行けないという点もありました。

結局足利義輝という人物像の問題ということでは同じことなのですが、その(多分史実であろう)細かな歴史上の出来事が前提としてあり、足利義輝はその歴史上の事実に沿うように動かされているようで、そのことが剣聖として性格づけられている本書の義輝の行動とはどうしてもそぐわないのです。

ただ、史実と言われる義輝の最後の場面の、ありったけの剣を畳に突き刺し、血糊で切れなくなった剣をとりかえて立ちまわったという話の描写はさすがに素晴らしく、心を打つものがありました。

ここで描かれている義輝が本書の全編を通じて描かれていたならば、さぞ面白い物語だったろうと思わずにいれませんでした。その点ではとても残念です。

歴史が好きで、戦国時代に詳しい人であれば更に面白く読めるのではないでしょうか。

雑読者

熊本市在住の爺さん。 活字中毒の乱読、雑読派。 SF小説、冒険小説などを特に好む。 音楽はかつてのフォーク好き。洋楽はブラフォー、ビートルズ他。

Share
Published by
雑読者
Tags: 戦国時代

Recent Posts

チョウセンアサガオの咲く夏 | 柚月 裕子

リンク 米崎地検の検事・佐方貞…

4年 ago

アキレウスの背中 | 長浦 京

リンク スポーツビジネスをめぐ…

4年 ago

ブラックガード | 木内 一裕

リンク 小学三年生の娘と二人暮…

4年 ago

冬の狩人 | 大沢在昌

リンク 3年前にH県で発生した…

4年 ago

ロータスコンフィデンシャル | 今野敏

リンク 外事一課の倉島は、「ゼ…

4年 ago

煉獄の獅子たち | 深町 秋生

リンク 関東最大の暴力団・東鞘…

5年 ago