建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の“相棒”は、一筋縄でいく男ではなかった―。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント。(「BOOK」データベースより)
『破門』という作品で2014年の直木賞を取った黒川博行という作家の作品を、どうせならシリーズの最初から読んでみようと思い借りた作品が本書『疫病神』です。
結論から言うと、実に面白い。登場人物のキャラも見事で主人公の二宮啓之と桑原保彦の二人の掛け合いは上質の漫才の掛け合いにも似て小気味いいのです。
本書も第19回吉川英治文学新人賞と、第117回直木三十五賞の夫々の候補作品となっています。
全編で産業廃棄物処分場に絡むゼネコンから暴力団までの様々な思惑が入り乱れます。
産業廃棄物処理場なるものの開発にどのような手続きや根回しが必要なのか、全くその世界を知らない身としては驚きの連続です。
勿論小説ですのでデフォルメはあるでしょうが、それにしても良く調べられ、リアリティのある背景を仕上げてあります。
何といってもこの小説の一番の魅力は先にも書いた二宮と桑原との掛け合いでしょう。大阪弁そのままに交わされる二人のやり取りはユーモアに満ちており、大変にリズミカルで小気味いいのです。
ヤクザとしてそれなりに名の通った桑原の、「金」を行動原理の全てとする様は徹底しています。一円にもならない仕事は歯牙にもかけません。
一方の二宮は堅気とはいえ、博打で借金まみれのどうしようもない男ですが、芯には強いものがあり、無茶なことをしでかしたりします。
そんな桑原は、勝ち目がない限りやくざに連れていかれた二宮でも見捨ててしまいます。しかし、計算づくではないところも見えるため、感情移入できるのでしょう。
文庫本で五百頁を越える分量を感じません。また続編でこの二人の掛け合いを読みたいと思わせられる作品でした。
楽しみなシリーズがまた増えました。直木賞受賞作に至るまでゆっくりと読み続けたいと思います。