警察庁警備局警備企画課の情報分析室、通称「ゼロ」の研修から戻った倉島警部補は、同じ公安外事課の先輩・葉山の動向を探るよう命じられる。同じ日、大手新聞社の大物がマンションから転落死した。倉島は、無関係に見える死亡事故と葉山に接点があることに気付くが…。国家を守る公安警察官の活躍を描くシリーズ第4弾。「BOOK」データベースより)
倉島警部補シリーズの第4弾となる最新刊です。
新しく公安のエリートとなることを期待されるゼロと呼ばれる研修から戻ったばかりの倉島警部補は、公安のエースである葉山の内部調査を命じられる。
一方、新聞社の編集局次長の死亡が報じられ、所轄署では自殺として処理されようとしていた。
しかし、ロシア大使館の三等書記官のコソラポフとの交渉や警視庁の刑事部とのやり取りの中で葉山の調査が進むにつれ、葉山と次長の死との関わりが見えて来るのだった。
主人公の倉島警部補も4作目ともなると、公安のエリートとも言うべき「ゼロ」の研修を受けることになります。
「曙光の街」「白夜街道」まではKGBのヴィクトルとの絡みがメインの話だったのですが、前作の「凍土の密約」からは公安メインの話にシフトしたような感じです。そして今回はとうとうKGBのヴィクトルは名前すら出てきませんでした。
このヴィクトルが存在感があって主人公と言ってもいい立場で描いてあったので、若干の物足りなさを感じてしまいました。
こうなると、今野敏の他の警察ものとは異なる、国家の観点での捜査を行う公安の仕事そのものがこのシリーズの特色になることになります。
でも、確かに所轄の刑事達とのやり取りの中での公安という立場での台詞や、公安としての心理描写が無いことはないのですが、「安積班シリーズ」や「横浜みなとみらい署シリーズ」との差異がそれ程には感じられませんでした。
つまり、いつものことながらこの作家の作品はとても読みやすく面白いのですが、それは他の刑事ものと同じ面白さであって、公安警察としての面白さでは無かったような感じがします。
とはいえ、この作家の作品が好きだからこその過大な要求なのでしょう。
話はテンポよく進み、最後の325頁まで、3時間はかからずに一気に読み終えてしまいました。
私の好みの物語は、どうしてもどこかに人情もののような小気味のいいやり取りが挿入されています。この作品でも、最後の会話などが定番でありながら、ちょっとした人間味のある場面で終えています。
やはりこの作家の作品は面白いです。
ちなみに、「アクティブメジャーズ」とは、情報戦における工作のうちの積極工作のことを言うそうです。情報収集ではなく、対象となる人物に対し影響力を行使して、その人物が自国に有利となる行動をとるように働きかける工作のことだそうです。