己が剣は求道か殺戮か!戦国の世にどこからともなく現れ、終生、自由な求道者として一刀流という巨木を打ち立て、そして忽然と姿を消した謎多き剣豪・伊藤一刀斎―天才兵法者の鮮烈人生をスピード感溢れる筆致で描出した、極上のエンターテイメント。(「BOOK」データベースより)
今一つ、小説として中途半端にしか感じられず、決して面白い小説とはいえないものでした。
もともと、伊藤一刀斎という人物自体詳細がよく分かっていない人らしく、生年や生誕地など異説が多数存在します。
本書は伝承で伝わっているエピソードをつなぎ、小島英記という作家なりの伊藤一刀斎を作り上げようとしています。しかし、それが決して成功しているとは言えないのです。
大島で流人の子として生まれ育った弥五郎は島を抜け、三島神社の矢田部宮司に拾われ、有名な甕割刀をも手に入れます。
この時点で物語はまだまだ五十頁にも達しておらずこの小説の冒頭部分に過ぎないのですが、少々好みと違う小説だと気づきました。
どうも、読み手である私とこの小説との交流は上手くいかないのです。登場人物に深みを感じられず、歴史的事実の羅列としか感じられませんでした。
『一刀流口伝書』などで伝わる伝承に種々のエピソードが書かれているらしく、本書でも色々なエピソードが盛り込まれているのは判るのです。しかし、もう少しそうした伝承を練り上げ、物語として展開されるのを期待していたのですがかないませんでした。
ただ、立ち会いの場面は剣筋をきちんと示し、立ち会いの臨場感を感じられる表現になっており、この丁寧さが物語本体にも欲しいと思いつつ読んだものです。
欠点ばかり挙げていて申し訳ないのですが、この作家の作品は多分読まないのではないかと思います。