探偵の元にやってきた一人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。だがそれは願えば叶うものではなかった。追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。(「BOOK」データベースより)
作者は漫画「ビーバップハイスクール」を描いたきうちかずひろ氏です。本書は三年程前に一度読んだのですが、気になり、再度読み返してみました。
本書『水の中の犬』は『矢能シリーズ』の第一弾であり、あの漫画と違い実に暗いハードボイルドです。
主人公は探偵。その探偵のもとに恋人の弟にレイプされ、自分の女になれと脅されているという女性依頼者がやってきた。
依頼の内容は本人も良く分かっていないようで、その弟から逃げ且つ恋人にも知られたくないと言うのだ。答えようのない質問に、探偵は解決策を考えてみようと、その依頼を受ける。
他では引受けないような依頼を受けてくれるその探偵には、実は隠された過去があった。
第一話「取るに足らない事件」はこのように始まります。
本書は、ほかに第二話「死ぬ迄にやっておくべき二つの事」、第三話「ヨハネスからの手紙」と関連する三つの短編で構成されていますが、一つの物語といった方が良いかもしれません。
勿論ハードボイルドと言って良いのでしょう。主人公はただひたすらに依頼者のために行動します。
そして、立ち上がれない程叩きのめされるのですが、かつての刑事時代の後輩や情報屋という仲間らしき人間の助けで動き回ります。
もう一人、矢能というやくざがいます。妙に心を通わせる重要なキャラクターです。
この矢能が『矢能シリーズ』の第二弾からの主人公となり、栞という女の子と共にこのシリーズを進めるのです。
三話とも人探しそのものは前述の警察の後輩と情報屋からもたらされる情報で時間をかけずに見つかります。救いのない物語はそこから展開します。
漫画的といえばそうかも知れませんが、かなり面白く読むことができました。
続編として、矢能を主人公とした物語『アウト&アウト』が出ています。