嫋やかな美しさを備える女将・お蝠が営む『おかんヶ茶屋』の惣菜は、ごく普通の家庭料理だが豊潤で心を和ませるあたたかい味。人は癒しを求めてこの茶屋に集まるのだ。そんな中、欽哉が人足寄場から戻ってくることに。皆に温かく迎えられ、歓迎会ではお蝠の惣菜を口にし泣きながら火消しの仕事に精を出すことを決意する。しかし、まもなく食事もせずに引きこもってしまった。欽哉の想いとは?書下し、お料理人情物語。(「BOOK」データベースより)
「夢草紙人情ひぐらし店」の続編という位置づけのシリーズなのですが、その前のシリーズを読まずに本書に手を出してしまいました。
今後はどのように変わるのかは分かりませんが、表題の「おかんヶ茶屋」の女将のお蝠は、少なくとも本書では彼らの話を聞き、たまに料理を差し入れするだけです。主人公はあくまで「ひぐらし店」の面々です。
以前読んだ「立場茶屋おりき」とは異なり、登場人物の会話が独特で、かなりの違和感を感じてしまいました。
ではそんなことは無く、もっとしっとりと落ち着いた文体で、ゆっくりと読むことが出来たように思ったのですが、しばらくこの作者の作品を読まなかった間に、この作者の作風が変化したのでしょうか。
本書では悪人が出て来ません。「おかんヶ茶屋」にひぐらし店の面々が集まり、この店で様々なことを話します。一般庶民の常として様々の問題が起き、それを皆で一致団結し、皆で解決するのです。
繰り返しになるかもしれませんが、ひぐらし店の皆がよく話し、その中でその舞台の状況説明が為されていきます。この点も気になりました。
良い人達が助け合って生きる物語が心が温まっていい、という人にはもってこいのお話です。こうした点は個人的な好みなので、この作風が好みの方もいらっしゃることでしょう。
しかし個人的には、かつて読んだ落ち着いたこの作家の文章をもう一度読みたい、と思ってしまいました。武家ものでは今でもそうなのか、確認の意味も込めて読んでみましょう。