警視庁の植島、検察の図師、調査報道の名雲、人事を握る北川ー。東都新聞社会部に優秀な記者ばかりがそろった黄金世代の同期六人。トップに立てるのはその中のただ一人。貫くべきは己の正義か、組織の維持か。出世か、家族か、それとも同期の絆かー。中間管理職の苦悩、一発逆転の大スクープ、社会部VS.政治部の熾烈な争い…火傷するほど熱い新聞記者たちの闘いを見よ。痛快無比な企業小説。(「BOOK」データベースより)
本書は、第159回直木賞の候補となった作品です。
第一話は警視庁キャップの植島昌志、第二話は調査報道班キャップの名雲、第三話は司法キャップの図師、第四話は遊軍キャップだった城所、第五話は国税庁担当の土肥、第六話では人事部の北川友介の姿が描かれます。
本書に書かれている記者たちの姿は実にリアリティに富んでいます。事実、著者自身が元記者であり、第一話「敗者の行進」でのエピソードが著者自身の経験をもとに書かれているのだそうです。
その現実感、迫真性の上に成立している本書は、プロローグとエピローグを除き、六人の同期の視点で、六つの話が語られています。その上で各話は連続していくのであり、全体で一編の物語を仕上げています。
五人の個性の異なる記者を、出世争いの中で一人抜け出した北川という男を中心に描き出しているこの物語は、ミステリーではありませんが、貼られた伏線を最後に回収するその手法は、ミステリーに似ています。
本書は新聞記者を主人公とする小説です。しかし、新聞記者を主人公とする多くの小説がそうであるように、「表現の自由」や「報道の自由」といった社会的な問題をテーマにした小説ではありません。
たしかに新聞記者が主人公である以上は記者としてのスクープ合戦などの見どころであり、そうした場面も描かれています。
しかし、本書はそうした記者としての仕事のほかに、会社員としての側面をも描写してあります。それは出世競争であり、保身であり、また家庭人としての側面でもあります。
各個人に記者という職業に対する考えがあり、新入社員時代から、中堅、そしてベテランへと成長していく彼らの姿は、社会で活躍している多くの人たちの心をうつのではないでしょうか。
そんな社会人としての記者たちが、それぞれの強烈な個性を発揮しつつ、最終的にそれぞれの信じる「正義」のもとにとある行動に出る姿は喝采を送らずにはいられないのです。
警視庁記者クラブ、司法記者クラブ、調査報道、遊軍、国税庁、そして人事部に分かれた東都新聞同期入社の六人の動向が見事に収斂していく様は見事しか言いようがありませんでした。