ハダカ一貫から、日本一の金融王へ!幕末から明治、大正と、激動の時代を生きた銀行業の元祖・安田善次郎。富山の貧しい下級武士出身ながら、商人として「千両の分限者」となることを志した善次郎は、数々の挫折と失敗を乗り越えて両替商・安田屋を江戸で開店、成功をつかんでいく。一代でみずほフィナンシャルグループの礎を築いた安田善次郎の、波瀾万丈の前半生に光を当てた長編小説。(「BOOK」データベースより)
東大安田講堂などにその名を残す、安田銀行創始者である「安田善次郎」の物語です。
安田善次郎という名前は知っていたものの、その生い立ち等は本書で初めて知りました。物語は主人公が両替商として成功するまでの半生が主に描かれています。
先日読んだ百田尚樹の「海賊とよばれた男」で描かれた「出光佐三」にしてもそうなのですが、何事かを成し遂げる人というのは皆、「誠実さ」をその根底に持っているのかもしれません。
ただ私には分からないのですが、競争の社会で、勿論努力が前提であるにしても、単に「誠実」というだけで生き残っていけるものなのか、若干の疑問が無いわけではありません。
本書でも「安田善次郎」(幼名「岩次郎」)は貧しい中でも貯蓄に励み、二度の江戸行きを失敗したものの最後には親を説き伏せ江戸での暮らしを手に入れます。
その江戸でも同僚から疎まれるほど働き、勤めたお店の主人にも認められるようになります。失敗もありながら、両替商として名を成していくのです。
本書は主人公の成長譚であり出世物語です。安田善次郎がどのように努力し、周りに認められていったかが描かれています。さすがと思わされます。
ただ、主人公の周りの人々の台詞が、友達をも含め少々教訓めいています。説教くさいとまでは言いませんが、読んでいてちょっと気になりました。
あとがきには「二十一世紀の日本にこそ、安田善次郎のような「成り上がり」が必要ではないか」と書いて、今の日本に元気がないのは、若者に「成り上がる」エネルギーがないからであり、今こそ本書の主人公のような人間が必要だと言っておられます。
その言葉の当否は私には分かりませんが、安田善次郎という人物はそれ程に魅力のある人物であることには間違いは無いようです。