主人公鳴沢了は、今回は青山署の生活安全課に異動となり、市民からの苦情処理を担当する立場になっていた。
その部署でDVの事件を抱えていた鳴沢は、被害者の世話をしていたボランティアの女性と知り合うことになる。ところがその女性は主人公鳴沢のアメリカ留学時代の親友の妹であることが分かるのだが、たまたま日本に来ていたその親友の手により、彼女とデートをすることになってしまう。
一方、鳴沢は老人たちのマルチ商法詐欺の訴えも担当することになるのだが、その詐欺事件は中国系マフィアの絡む大掛かりな事件へとその様相が変化していく。そして、事件は意外な広がりを見せることになる。
主人公鳴沢がアメリカ時代の親友と東京の街中で偶然出会ったり、担当事件の関係者がその親友の妹だったりと、少々筋立てに都合がよすぎる感が無きにしも非ずです。でも、緻密に描写されていくこの作家の物語はその偶然の出会いに不自然な印象を感じさせません。
また、前作で共に走り回った仲間たち、特に想いを交わした小野寺冴のことも全く触れられておらず、新たな恋人になるかもしれない女性が登場します。本作は十分に独立した物語としても楽しむことができると思われるのです。
本作では、鳴沢の留学時代の描写があったり、少しずつ主人公の背景が語られていきます。この時点でシリーズものとしてある程度長く書くことを考えていたのではないでしょうか。
このシリーズは派手さがあるとは言えず、物語はどちらかと言うと淡々と進んでいきます。主人公の靴や服に対するこだわりなども見られ、どことなくハードボイルドの雰囲気を漂わせています。
少々物語が長いかなという感じはしますが、それでも続きを読み続けると思います。