旅客機がハイジャックされ、操縦士のオハラはアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられた。機体はひどく損傷し、犯人らは死亡。かろうじて生き残ったオハラたち九名は、高山病に苦しみながらも救助を求め山を下り始めた。そんな一行を、突如銃撃が襲う。一体誰が、何のために?背後は峻険な峰々。絶体絶命の窮地に陥った彼らは、驚くべきアイデアでこれに挑むが…壮大な自然に展開する死闘。冒険小説史上屈指の名作。(「BOOK」データベースより)
多分二十年振りほどに三度目を読み返しました。
本書『高い砦』を最初に読んだのは三十歳になる前くらいでしたので四十年以上も前になるのでしょうか。当時は冒険小説が花盛りで、今では名作と言われる作品が多数発表されていました。中でも本書は面白い冒険小説の一番手に挙がっていたと思います。
ライアルの「深夜プラス1」、マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」や「荒鷲の要塞」、ヒギンズの「鷲は舞い降りた」など、挙げればきりはありません。なかでも本書は、名作の名を欲しいままにしたと言っても過言ではない作品です。
本書は特定の個人が主人公という訳ではなく、南アメリカの山中に墜落した飛行機に乗り合わせた乗客達が主人公となり活躍します。また戦いの方法も手作りの弓であったり、投石機であったりと、手近にあるもので武器を作り上げて銃や機関銃と相対するという、実に特異な物語です。
今回読み返してみて、当時はあれほど興奮して読んだ本なのに少々手応えが薄いと感じてしまいました。いや、今でも面白い作品なのです。手に汗握るシーンの連続であり、それなりに引き込まれて読んだのです。しかし、昔ほどの強烈な印象がありませんでした。
それは、冷戦真っ只中であった60年代当時(私が読んだ70年代もそう)と現代という時代背景の差があると思います。
本書『高い砦』の中心人物の一人である墜落した飛行機のパイロットであるティム・オハラは朝鮮戦争に従軍した経験を持ち、共産主義者に対して憎悪とでも言うべき感情を持つ人物です。また、武装ゲリラに襲われる原因となる人物も反共産主義勢力である民主化勢力の中心人物なのです。このような共産主義者に対する「反感」は今ではあまり実感できない感覚だと思われます。
もう一つの理由として、現代に至るまでの間に良質な冒険小説が次々と著されたことがあるのではないでしょうか。それまでのイギリスが中心だった冒険小説の世界に、「ダーク・ピット」シリーズのクライブ・カッスラーや「レッド・オクトーバーを追え」から始まる「ジャック・ライアンシリーズ」のトム・クランシーなどのアメリカの作家たちが参戦し、より洗練された冒険小説が発表されました。そうした、時代に即したスマートな冒険小説を読み慣れてきたということもあるかと思います。
ましてや今は我が日本にも重厚な冒険小説が現れているのです。北方謙三や志水辰夫、船戸与一と挙げればきりがありません。そうした良質の冒険小説に接してきたために、少々時代背景が古い本書のインパクトを薄いと感じてしまったのでしょう。
とはいえ、今や古典と言われる本作品は、少々時代遅れの感には目をつぶってもらうとして、それでも一度は読んでみた方がいい作品ではないでしょうか。
スーパーヒーローでは無い、普通の人間が知恵と勇気を持って難関を乗り越えていくという、冒険小説の原点が読みとれると思います。
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Siroさんの寸評でもう読んだ気になっています。
「砦」がタイトルにつく作品は映画でも何本かありました。
もしかして、「砦」から受ける感じがすごく古さを感じさせるのでしょうか、
子供達の名前も時代と共に大きく変わってきました。
読めない名前は多いです、私の孫の名前が難しく時々思い出す作業をする時もあります。
> もしかして、「砦」から受ける感じがすごく古さを感じさせるのでしょうか、
そうですね。
「砦」という文字には確かにそういう印象はありますね。
でも、本書はそういう「砦」に閉じこもるわけではありません。
渓谷にかかった橋での攻防がメインですので、この橋が「砦」にあたるのでしょうか。
> 子供達の名前も時代と共に大きく変わってきました。
私等の年代からすると首をひねる名前が増えましたね。