阿部看護婦長、またの名を“血まみれのマリア”は心に決めた。温泉に行こう。雪に埋もれた山奥の一軒宿がいい…。大都会の野戦病院=救命救急センターをあとに、彼女がめざしたのは―なんと我らが「プリズンホテル」。真冬の温泉宿につどうのは、いずれも事情ありのお客人。天才登山家、患者を安楽死させた医師、リストラ寸前の編集者。命への慈しみに満ちた、癒しの宿に今夜も雪が降りつもる。(「BOOK」データベースより)
プリズンホテルシリーズも三作目です。
救命救急センターの看護婦長「阿部マリア」またの名を「血まみれのマリア」は、ひとり静かに心を休めるために我らが「プリズンホテル」にやってきた。そこにはかつて彼女の恋人だった医師や天才登山家など例によって普通ではないお客が集っていたのだった。
今回の作品はドタバタは控え気味で、愛情豊かな仕上がりになっています。
だからということなのでしょうか、前巻までは垣間見えていただけの浅田節が、本書でははっきりと感じられるようになってきました。
ところで、本書のようなドタバタ喜劇作品であっても、その道のプロの行動の描写は書き手がその道の専門的知識をよく咀嚼しなければ描写出来ないでしょう。
にもかかわらず、読み手の殆どは素人ではあるにしても、読み手を本書の世界感に引きずり込むだけの状況を描き出すのですから人気作家という文章のプロの仕事は見事なものです。
でも、それを言うならプリズンホテルのスタッフである板長の梶平太郎や、服部シェフの言葉、更には任侠道の作法でさえも同様なのですが。
本書の最初の山場として、救命救急センターでの「血まみれのマリア」の活躍振りを描写し、彼女の人間性をも描き出す場面がありますが、その場面の緊迫感を感じながら、そんなことを思っていました。
本書では、一本はその医療の専門家の阿部マリアと平岡正史医師とのロマンス、もう一本は、いじめに耐えかねて山での死を選んだ少年と天才登山家武藤嶽男との対話、という二本の話を軸として話は進みます。
その周りで木戸孝之介やその叔父木戸仲蔵といったいつもの面々が動き回っているのです。
しかし、読み終えてみるとやはり最終的には木戸孝之介の物語に帰着するのでしょうか。木戸孝之介の、愛人の田村清子に対する子供のような愛情表現は極限を迎えるし、母親との関係にも変化が見られます。
本シリーズもあと一冊で終わりです。残念なのですが、浅田次郎の本はまだ沢山残っているのが楽しみでもあります。
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いろいろ紹介されてる本の中で、この「プリズンホテル」のシリーズが一番興味をそそられます。
全何巻ですか?
読もうかなあ~
西武系のプリンスホテルと刑務所系のプリズンホテル、かぶりようのないほどの違いなのになんとなくニッタッとします。
群馬県の一角にこのような場所もあったかも、それよりも那須に一望閣というホテルがあります、そこがモデルかな?
> いろいろ紹介されてる本の中で、この「プリズンホテル」のシリーズが一番興味をそそられます。
面白いよ。
面白いけど、一番と言われると難しい。
今読んでる「地下鉄に乗って」も、そこそこ面白いしね。
結局どれもよさそうに思える。
> 全何巻ですか?
> 読もうかなあ~
全四巻です。
ホントに軽く読めます。
> 西武系のプリンスホテルと刑務所系のプリズンホテル、かぶりようのないほどの違いなのになんとなくニッタッとします。
プリンスとプリズン。
言われてみれば、アナグラム的でもあり似てますね。
気付きませんでした。
> 群馬県の一角にこのような場所もあったかも、それよりも那須に一望閣というホテルがあります、そこがモデルかな?
モデルがどこかは不明ですが、一応の設定は群馬県北部じゃなかろうか、と推測している人がいました。