その誇りに、囚われるな―。鉄砲百人組の老武士、山岡晋平。伊賀衆ながら伊賀を知らず、門番の御役目とサツキ栽培で活計を立てていた。だがある日、伊賀同心の友が殺される。大金を得たばかりという友の死の謎を探る中、晋平は裏の隠密御用、伊賀衆再興の企て、そして大火の気配を嗅ぎ取った。老いてこそ怯まず、一刀流の俊傑が江戸に澱む闇を斬る。(「BOOK」データベースより)
四谷大木戸の外の百人町に住む大久保組伊賀同心の山岡晋平には川井佐吉、小林勘兵衛、横尾太一という幼馴染がいた。
ひと月に四、五回程の大手三之門の門番の日以外はサツキの苗の栽培により三十俵二人扶持の生計を補っている身であり、その身分に十分に満足もしていた。
しかし、伊賀衆の中には本来は忍びである筈の伊賀衆が門番という身分に甘んじている、という事実に屈託を抱えているものも居た。
ある日、川井佐吉が殺されたことにより、残された三人の運命が転がり始める。
以前は『流水浮木: 最後の太刀』と題されていた物語を改題した作品で、主人公山岡晋平ほか還暦を過ぎた老骨三人の青春記と言ってもいいでしょう。
本来は隠密御用を勤める身である筈の伊賀衆としての存在意義を確認する、そのことに情熱を燃やす仲間とそれを助けんとする晋平。
子供の頃餓鬼大将であった勘兵衛と短気の太一が、還暦を過ぎた今でも仲間として行動するその様は同世代の私には他人事ではなく、自分自身の居場所を探すと言うその意識自体に共感を覚えます。これは同世代の人たちには共通する思いではないでしょうか。
青山文平という人は侍が侍として生きることの難しさをこれまでの作品で書いておられます。
著者の青山文平は、本書が時代背景とする「安永」年間は「武家の存在じたいの矛盾が浮かび上がる」時代であって、ドラマが生まれ易い時代だと言っています。
本書も、三十俵二人扶持という軽輩の身とはいえ、自分という存在自体を見つめる武士の物語です。仲間と共に自分探索に向かう青春の物語だと感じられたのです。
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勿論、読んだ事がないのですが・・・
この青山文平「白樫の木の下で」「かけおちる」「流水浮木」と
だんだん興味がわいてきました。
侍が侍として在るそのこと・・・
何を言いたいのか気になりますね~
どれか一冊を、と言われれば「白樫の木の下で」を勧めます。
最初に書いた時代小説なのに完成度は高い。
私の表現力が拙く、上手く言えないのだけど、その文章がとにかく見事としか言いようがないのです。
決して明るくはない物語ですが是非一読して欲しい作品です。